私は医師や専門家ではありません。
ここに書かれていることは
ステロイドを否定する主旨ではなく
あくまで私の経験談です。
前編はこちら↓
長男の肌が短期間で
劇的にきれいになり
本当に魔法のような薬だと
感激した日から1年半が経つころ
病院で
『漢方だけで作られている』と
説明を受けていたその漢方クリームに
最強クラスのステロイドが
入っていたことを知りました。
私がどの時点でその漢方クリームに
ステロイドが入っているという
情報を知ったのか
なかなか正確には思い出せず、
病院から連絡があったのか
書面が送られてきたのか
忘れてしまいましたが、
世間に公になり
朝の情報番組で取り上げられているのを
見た時点では(2014年3月18日「とくダネ!」)
私はすでにステロイドが混入されていることを
知っていたと記憶しています。
長男は2歳半ごろでした。
その後の訴訟に関する
東京地裁から送られてきた封書や
破産管財人から送られてきたものだけが
今でも手元に残っています。
説明会が開かれるという知らせ
記憶が前後していますが
テレビで報道される前に
患者説明会が開かれました。
(2014.4.4.説明会詳細文字起こし)
私は九州に住んでおり
いつも神奈川の実家に帰った際に
山口医院で漢方クリームを買っていました。
当時次男を妊娠していたこともあり、
大きいおなかでまだ小さかった上の子2人を連れて説明会のために帰省することは難しく
代わりに実家の母に行ってもらいました。
参加した母から聞いた話では、
- 山口先生自身も騙されていたらしい
- 薬を作っていた中国人医師を完全に信用していた
- 今まで買った漢方クリームの代金は返ってくるらしい
- ステロイドが入っていても構わないからクリームをゆずって欲しいという人もいた
- 時折怒号が飛び交うような場面もあった
とのことでした。
詳細はこちら→(2014.4.4.説明会詳細文字起こし)
幸いという言葉が適当であるかわかりませんが、
私が長男にせっせと漢方クリームを塗っていたのはごくごく短期間で、
すぐに良くなったので保湿剤だけに切り替えていました。
本来は医師の指示通り
塗らなければなりませんが、
「良くなったしもういいや」
という勝手な判断で使用を控えていました。
これには理由があり、
漢方クリーム自体が
少量で高額であることと、
九州に住む私は
次の帰省の前になくなってしまっては
いざというときに困る
という事情も影響し、
ひどくなったところに
ごく少量をうすくのばして
使用していただけでした。
私たち親子にとっては
貴重なおまもりのような存在の薬でした。
しかし中には長年使用している
患者さんもいらっしゃったでしょうし、
その薬を急にやめたらさらに悪化してしまうのではないかと、
不安になる方もいたと思います。
支払ったお金が返ってくる来ないというお金の問題以前に、その薬に完全に頼りきってしまっていた方からすれば、
ステロイド云々より今後そのクリームが手に入らないことの方が大問題であるという印象を受けました。
あの効果の高さを思うと、
たしかに理解できます。
説明会自体はこのあとも数回行われたようですが
母に行ってもらったのはこのときだけです。
自分の選択がまちがっていたと気付かされる
知らず知らずのうちに
あれほど避けていたステロイドを
長男の肌に塗っていた私。
最強クラスのステロイドが
入っているとも知らずに
キレイになった!とよろこんでいた
自分のマヌケさに情けなくなりました。
使用方法として正しくなかった部分は
否めませんが
結局ステロイドでキレイな肌を
手に入れた長男に対して私は思いました。
「もっと早い段階でしっかりと
ステロイドを使った治療をしてあげていれば、長い間この子をかゆみや痛みで
苦しめることはなかったのではないか」
「かゆくてかゆくて眠れないつらさを味わわせることもなかったのではないか」
「ステロイドを使用して皮膚のバリア機能を正常に近づけておいてあげたら
長男の食物アレルギー(卵・大豆・小麦・乳製品)ももっと軽度で済んでいたのではないか」
「皮膚のバリアがないままの状態が長く続いたせいで喘息になったのかもしれない」
全部ステロイドを怖がって使わなかった私の選択がまちがっていたせい
そう思うようになりました。
月日が経ち長男も大きくなり、
喘息も食物アレルギーも改善し
肌もずいぶん丈夫になりました。
しかし私の選択がまちがっていたせいという反省は
今でも持ち続けています。
ときどき思い出しては
後悔の念がわき起こり
長男に申し訳ない気持ちに押しつぶされそうになります。
たらればの話ですので
確実なことは言えません。
食物アレルギーや喘息に関しては
どちらにしろ発症していたかもしれません。
ただ一つ言えることは
赤ちゃんのときの
かきむしってつらそうな息子の症状は
ステロイドを使用することで確実に軽減させてあげられたということです。
私の「長男のため」という
感情の向かうベクトルが
「こわい薬を使わない」ということではなく
「少しでも今あるつらい症状を楽にしてあげる」ことに向かっていれば
もっと違った乳幼児期を過ごせたはずです。
ステロイドの副作用を怖がり
将来後悔しないためにと拒否し続けた
あげくの果てに
結局後悔と反省をするに至ったという顛末です。
これからは怖がらずに正しく取り入れていこう!
と、皮肉にもこの事件をきっかけに
スッパリとアンチステロイドの呪縛からふっ切れたのでした。
恨む気にはなれなかった
この件で、私には想像もできないほどの
被害を受けた方もいらっしゃるでしょう。
これはあくまで私個人の意見であり
ご批判もあるかもしれませんが、
私は山口先生を恨む気にはなれませんでした。
もちろん医師として
病院に来る患者さんたちに
自身で成分もよく調べずに
漢方クリームを処方していたことに関しては落ち度があると言わざるを得ません。
しかし山口先生ご自身のお子さんも
アトピーで困っていたところ、
何十年も前から親しくしていた
中国人医師が勧めてくれたその薬が
てきめんに効いたということもあり、
よく効く薬だから困っている他の患者さんにも
使わせてあげたいと思うに至った経緯は
純粋な医師としての良心からくるものであったと思います。
私たち親子に
「大丈夫、よくなりますよ」と、
それまで誰も言ってくれなかったあの言葉に、
ステロイドを毛嫌いするカモを見つけて
金儲けしてやろうという意図は
決してなかったと今でもそう思っています。
山口医院に漢方クリームと謳って薬を卸していた
自称中国人医師のやりかたは
まるでコンフィデンスマンJPのような
よくできた詐欺師のドラマでも見ているような
それはそれは見事なもので(注:ほめてない)
山口先生を現地の工場に連れて行き
見学をさせたりと実に手の込んだものでした。
(実際は全然関係のない工場だった)
何十年も付き合いのある人間にそこまでされて、だまされていると気付ける人っているのかと同情してしまう気持ちもありますが、
やはり医師である以上、
処方する前に確認をしておかなければいけなかったことはたくさんあるよなと、今でもとても複雑な気持ちです。
まとめ
この山口医院の漢方クリームに
ステロイドが混入していると発覚した経緯は
あまりにその漢方クリームが効きすぎることに
不信感を覚えた方が
専門機関で調べてもらったことがきっかけです。
詳細:国民生活センター
のちに、
- 漢方クリームの購入代金
- 保険診療自己負担分
- 慰謝料
が振り込まれ、
逃げ続けていた自称中国人医師との和解が成立し
弁護団も2019年に解散しています。
詳細:神奈川新聞
普段わりとものごとを疑ってかかるタイプの私ですが、当時はそういった疑いをまったく持つことなく
長男の肌のことで精神的に疲弊していましたし
わらにもすがる思いでいたため
相当すきだらけだったなと思います。
自分の子供のこととなるとなおさら、
ある種思考停止状態であったことは
間違いありません。
調剤薬局で薬剤師さんの
説明を受けたものでない以上
今思えば疑うのは当然ですが、
勇気を持って調査を依頼し
ファーストペンギンになった方の精神を
学ばなければいけないなと改めて思いました。
子供を守る親の立場としても、
これからの時代を生きていくものとしても、
情報の精査の大切さを考えさせられるできごとでした。